フランス・アルザス地方の中心都市ストラスブール(Strasbourg)。まるでドイツのような、かわいらしい木骨組みの家々が並ぶメルヘンティックな風景で知られる古都です。その美しい旧市街は世界遺産に登録されています。さらに、欧州議会などEUのさまざまな機関が置かれる国際都市としても重要な町です。その位置と役割から「ヨーロッパの十字路」と呼ばれています。
町の名前の由来は、「道の町」を意味するラテン語「ストラテブルグム」。古くから交通の要衝として栄えてきました。
そんなストラスブールの歴史は、とても複雑です。というのも、フランスとドイツの間の領土争いで何度も国籍が変わった町だからです。17世紀にフランスの王政下に置かれ、普仏戦争(1870~1871年)の敗戦でドイツ領となり、第1次世界大戦でフランスに戻り、第2次世界大戦ではナチス・ドイツに占領され、戦後再びフランスに戻りました。ドーデ(1840~1897年)の小説『最後の授業』からは、普仏戦争の敗戦でアルザス地方がドイツ領となった際の様子がよく伝わってきます。
ストラスブールに欧州議会や人権裁判所が置かれたのは、このような複雑な歴史を踏まえてのことでした。「ヨーロッパの平和は仏独の和解から」という信念がその根底にあります。
●ドイツの香り漂う、地方色豊かな町
ストラスブールのあちこちで感じられるドイツの香り。旧市街を歩くとまず目に飛び込んでくるのは、美しいコロンバージュ(木骨組み)の家々。まるでおとぎの国のような世界が広がっています。
ふたつの言語で書かれた道路表示にも気づくことでしょう。上はフランス語、下はアルザス語で書かれています。これはアルザス地方の方言で、ドイツ語に非常に近い言語です。